句動詞の覚え方:シャドーイングで「使える」英語にする方法

受験のときに英熟語帳で「put off=延期する」「give up=あきらめる」と何百個も暗記したのに、会話では一つも出てこない。映画や動画で「I'll pick you up at seven.」と言われても聞き取れない。そんな経験はありませんか?それは記憶力の問題ではなく、覚え方の問題です。句動詞は文字ではなく「音」と「場面」の中で生きています。この記事では、句動詞の覚え方としてシャドーイング(音声のすぐ後を追って声に出す練習)を使う方法を、日本人がつまずきやすいポイントと一緒に解説します。
シャドーイングそのものが初めての方は、先にシャドーイングのやり方ガイドで基本の手順を確認してから読み進めると、より効果的です。
句動詞の覚え方で、単語帳だけでは足りない理由
句動詞(phrasal verb)とは、動詞に up・out・off などの小さな語(副詞・前置詞。ここでは「パーティクル」と呼びます)がついたかたまりです。単語帳で覚えるとき、次の3つが抜け落ちます。
- 音がない:紙の上では get up は2語ですが、会話では1拍のかたまりで、しかも強く読まれるのは up のほうです。
- 場面がない:take off には「脱ぐ」「離陸する」「急に人気が出る」など複数の意味があり、どれなのかは文脈でしか分かりません。
- 語順の感覚がない:turn off the light も turn the light off も正しいのに、代名詞なら turn it off だけが正解です。「turn off it」は文法問題では選べても、口から出るときには間違えがちです。
シャドーイングなら、句動詞を本物の文の中で聞き、リズムごと口に写し、正しい語順を何十回も声に出すことになります。つまり「知っている」を「使える」に変える練習です。
強く読むのはパーティクル:日本人が見落とすアクセント
句動詞の発音で最も大切なルールは、本当の句動詞ではパーティクルに強勢が来ることが多いという点です。ネイティブは「give UP」「calm DOWN」「turn it OFF」と言います。ここでのパーティクルは意味の中心なので、強く、はっきり読まれます。
一方、look at や listen to のように動詞のあとに普通の前置詞が続く場合、前置詞は弱く読まれます。
- She LOOKED at the word.(前置詞 at は弱い)
- She looked it UP.(パーティクル up は強い)
日本語は高低アクセントで、音の強弱をあまり使いません。そのため日本人は「ギブ・アップ」と2語を同じ強さで読むか、動詞のほうを強くしてしまいがちです。これでは聞き手にとって意味の手がかりが消えてしまいます。機能語が弱くなる仕組みは英語の弱形とシュワの解説で詳しく扱っていますが、句動詞では逆に「小さな語が強くなる」ことを覚えておきましょう。
「pick it up」がひとつの単語に聞こえる理由
パーティクルの多くは up・out・off・on・in・over のように母音で始まります。前の語が子音で終わると、その子音が次の母音にくっついて、ひとつの音のかたまりになります。
- pick it up →「ピキタップ」(アメリカ英語では「ピキラップ」に近い)
- turn it off →「ターニトーフ」
- check it out →「チェキラウ」
- find out →「ファインダウ」
- get up →「ゲラップ」
ここで問題になるのがカタカナ英語の癖です。「ピック・イット・アップ」のように子音のあとに母音(ク・ト・プ)を足すと、連結がすべて切れて、リズムも崩れます。単語帳で「ピックアップ」とカナで覚えた音と、実際の「ピキタップ」がつながらないのが、聞き取れない最大の原因です。連結・脱落などの5つのルールは英語の音声変化のまとめ記事で整理しているので、あわせて確認してください。
動詞ではなく「パーティクル別」にまとめて覚える
英熟語帳は get・take・put のように動詞ごとに並んでいることが多いですが、get up・get over・get along with には共通点がほとんどなく、覚えにくい並べ方です。一方、パーティクルにはそれぞれ「コアイメージ」があります。イメージを一度つかめば、初めて見る句動詞も意味の見当がつくようになります。
UP:完了・最後まで・上昇
use up, eat up, clean up, fill up, speed up.「Eat it up.」は「全部食べちゃって」。
DOWN:減少・停止・固定
calm down, slow down, break down, write down, settle down.「down=固定して動かない」を解説するレッスンは、tie down や nail down のような句動詞をイメージごと練習するのにぴったりです。
OUT:外へ・見つけ出す・なくなる
find out, figure out, run out of, work out.「見つけ出す」「解決する」系が多いのが特徴です。
OFF:離れる・止める・取りやめる
turn off, take off, put off, call off.
ON:接触・継続
go on, carry on, hold on, put on.on の基本イメージを扱う動画で、「くっついている」「続いている」という感覚を音と一緒に確認しましょう。
最初に覚えるべき句動詞30個
何百個も覚える必要はありません。日常会話の大部分は30個ほどでカバーできます。自分の一日を説明するのに使えるものから始めると、翌日すぐに使う機会があります。
- 朝から夜の生活:wake up, get up, put on, take off, turn on, turn off, go out, come back
- 仕事・勉強:find out, look up, fill in, hand in, set up, sort out, catch up
- 予定・人づきあい:pick up, drop off, show up, put off, call off, hang out
- トラブル・気持ち:run out of, break down, give up, calm down, carry on, figure out, speak up, wrap up
1つ目のグループは、朝のルーティンで使う30の句動詞をストーリー形式で練習できる動画がちょうど合っています。職場で使うものは、come in・speak up・wrap up など仕事の会話で使う句動詞から始めると、短い文でリズムをつかめます。
1日15分のシャドーイング手順
- 意味をつかむ(2分):スクリプトを見ずに聞き、場面と流れをつかみます。
- 句動詞に印をつける(2分):スクリプトで「動詞+パーティクル」に下線を引き、強く聞こえたパーティクルを丸で囲みます。
- 1文ずつシャドーイング(5分):音声のすぐ後を追い、パーティクルの強勢と連結を大げさなくらい再現します。「I'll ピキタップ later.」
- 目的語を入れ替える(3分):「turn off the light」を「turn it OFF」に言い換えます。代名詞は真ん中、という語順を文法表ではなく口で覚える練習です。
- 自分の文を言う(3分):その日の句動詞を使って、自分の生活について本当の文を3つ言います。「I ran out of coffee this morning.」
会話力全体を伸ばす考え方は効果的な英語スピーキング練習のページにまとめています。句動詞の練習も、最終的には自然な会話の中で使えることがゴールです。
4週間の練習プラン
- 1週目:生活の句動詞。毎日1本の動画で15分の手順を行い、句動詞だけでなく文ごとノートに残します。
- 2週目:仕事・勉強の句動詞を追加。1週目の動画を1本、スクリプトなしでシャドーイングして復習します。会議やメールで使う句動詞を増やしたい社会人は、ビジネス英語をシャドーイングで身につける勉強法の「自分の仕事に置き換える」手順も取り入れましょう。
- 3週目:1日1つのパーティクル(up・down・out・off・on)に集中し、これまでの動画から5つずつ集めます。
- 4週目:B1レベルの動画など、句動詞がテーマではない自然な英語に挑戦し、いくつ聞き取れるか数えてみます。TOEICのリスニングでも句動詞は頻出なので、TOEIC対策向けの動画で耳を慣らすのもおすすめです。
日本人によくある句動詞のミス
- 動詞を強く読む:「I GAVE up」だと対比のように聞こえます。「I gave UP.」が自然です。
- 母音を足す:「ピック・イット・アップ」では連結が切れます。子音は短く、次の母音に乗せましょう。
- 代名詞を最後に置く:「turn off it」「pick up it」は誤り。代名詞は動詞とパーティクルの間です。
- 和製英語との混同:日本語の「ピックアップする(選び出す)」は、英語の pick up(迎えに行く・拾う・身につける)とずれています。英語では「選ぶ」は pick out です。
- 硬い単語ばかり使う:postpone はメールでは自然ですが、話し言葉では「Let's put it off.」のほうがずっと自然です。
今日から句動詞をシャドーイングで覚えよう
句動詞を本当に覚えたと言えるのは、訳が言えるときではなく、自然なスピードで聞き取れて、正しい強勢と連結で言えるときです。この記事の動画から1本選び、15分の手順を今日と明日、続けてみてください。ShadowingEnglish では、動画を1文ずつ区切ってシャドーイングし、自分の声を録音すると、AIが発音を採点して音素レベルで分析してくれます。パーティクルがきちんと強く読めているか、「pick it up」がひとつのかたまりになっているかを、その場で確認できます。


