英語の黙字(発音しない文字)一覧:ルールとシャドーイング練習法

climb を「クライムブ」、debt を「デブト」、receipt を「レシプト」と読んで、相手に首をかしげられたことはありませんか。原因は、英語の黙字、つまりつづりにはあるのに発音しない文字です。英語の黙字はよく使う基本単語にこそ多く、know、walk、listen、hour、night のように中学校で習う語にずらりと並んでいます。この記事では、英語の黙字をパターン別に一覧で整理し、日本人がつまずく理由と、耳と口で直すシャドーイングの手順を紹介します。辞書の記号が読めると黙字は一目で分かるので、不安な方は発音記号(IPA)のトレーニングも並行して進めてください。
英語の黙字とは:なぜ発音しない文字があるのか
黙字(silent letter)とは、単語のつづりに含まれているのに、音としては読まれない文字のことです。「なぜ書くのに読まないのか」と思いますが、理由は大きく3つあります。
- 昔は発音していた:knight の k や gh は、数百年前の英語では実際に音がありました。話し言葉の音だけが変わり、つづりは古いまま残ったのです。
- 語源に合わせてあとから足された:debt の b はラテン語の debitum に合わせて、island の s は isle との連想で、学者があとから書き足した文字です。最初から一度も発音されていません。
- ほかの言語から来た:psychology の p はギリシャ語、ballet の t はフランス語のつづりをそのまま持ち込んだものです。
つまり英語のつづりは「今の音の記録」ではなく「昔の姿の記録」です。文字を1つずつ音に変えていく読み方が通用しないのは、このためです。
日本人が黙字でつまずく3つのパターン
1. ローマ字読みでつづりを覚えた
テストのために、Wednesday を「ウェドネスデイ」、island を「イスランド」、know を「クノウ」、climb を「クリンブ」と唱えて覚えた人は多いはずです。つづりを書くには便利な方法ですが、頭の中に「読まない文字まで読む音」が残ってしまいます。会話でとっさに出てくるのは、この暗記用の音のほうです。
2. カタカナ語が正解を知っているのに、気づいていない
意外なことに、カタカナ語は黙字についてはかなり優秀です。次の語は、カタカナのほうが正しい音に近くなっています。
- knife → ナイフ、knock → ノック、knit → ニット(k を読まない)
- walk → ウォーク、talk → トーク、half → ハーフ、salmon → サーモン(l を読まない)
- listen → リッスン、castle → キャッスル、Christmas → クリスマス(t を読まない)
- sign → サイン、design → デザイン、campaign → キャンペーン(g を読まない)
- comb → コーム、thumb → サム、doubt → ダウト(b を読まない)
- answer → アンサー、sword → ソード、wrist → リスト(w を読まない)
問題は、英文を目で読むときにこの知識が使われないことです。つづりを見た瞬間、ローマ字読みのスイッチが入り、「サルモン」「スウォード」と読んでしまいます。母音を足すくせなど黙字以外の問題は、カタカナ英語の直し方の記事にまとめてあります。
3. カタカナが逆に邪魔をする語もある
少数ですが、カタカナが黙字まで読んでしまっている語もあります。cupboard は「カップボード」ではなく /ˈkʌbərd/(カバード)で、p は読みません。sandwich の d はふつうの速さの会話では落ちることが多く、handkerchief、handsome、grandmother の d も同じです。often は「オフン」が基本で、t を入れる読み方も認められていますが、迷ったら入れないほうが安全です。
英語の黙字(発音しない文字)ルール一覧
黙字には完全な法則はありませんが、「この並びのときは読まない」という型を知っておくと、8割ほどは予測できます。声に出しながら読んでみてください。
- 語頭の kn の k:know、knee、knife、knock、knight、knit。n の音から始めます。
- 語頭の wr の w:write、wrong、wrist、wrap。r の音から始めます。answer、sword、two、whole の w も読みません。
- 語末の mb の b:climb、comb、thumb、lamb、bomb、tomb。唇を閉じた m で終わり、はじきません。climbing、plumber のように語尾が付いても b は戻りません。
- bt の b:debt、doubt、subtle。
- l の黙字:walk、talk、chalk、half、calf、calm、salmon、folk、そして could、would、should。助動詞の3つは /kʊd/ /wʊd/ /ʃʊd/ で、l のかけらもありません。
- t の黙字:-sten と -stle の形に注目します。listen、fasten、castle、whistle。Christmas、mortgage も同じ仲間です。
- h の黙字:hour、honest、honor、heir。母音で始まる扱いになるので、冠詞は an hour、an honest answer になります。ghost、what、when の h も音になりません。
- gh の黙字:night、light、right、high、though、through、daughter、weigh。ただし laugh、enough、cough では /f/ になります。
- gn の g:sign、design、foreign、campaign。ただし signature のように後ろに母音が続く派生語では g が戻ります。
- その他:psychology、receipt、cupboard の p、island、aisle の s、autumn、column の n、Wednesday、handsome の d、muscle、scissors、science の c。
なお、th は「h が黙字」なのではなく、2文字で1つの音を表す組み合わせです。舌の位置はth 発音のコツで確認できます。また、worked や stopped の e が読まれないのは語尾のルールで、ed 発音のルールにまとめています。car や bird の r を読むかどうかは黙字というよりアクセントの違いなので、アメリカ英語とイギリス英語の発音の違いを参考にしてください。
黙字はリスニングでも落とし穴になる
黙字は「話すとき」だけの問題ではありません。読まない文字まで含めた音で単語を覚えていると、正しい音が聞こえたときに、その単語だと認識できないのです。
- walk と work:walk を「ワルク」に近い音で覚えていると、/wɔːk/ が聞こえても結びつきません。walk は口を縦に開けた「オー」、work は口をあまり開けないこもった音 /wɜːrk/ です。
- could / would / should:弱く短く読まれるうえに l がないので、聞き逃しやすい語の代表です。
- 同じ音になる単語:know と no、knight と night、write と right、hour と our、whole と hole、knew と new。黙字を取ると完全に同じ音なので、文脈で選ぶしかありません。
書き取りで knight を night と書いたなら、それは耳のミスではなく文脈のミスです。逆に、half が聞き取れなかったなら、覚えている音そのものが違っています。ミスの種類を分けて記録する方法は、ディクテーションのノートの取り方で詳しく説明しています。
黙字を直すシャドーイング5ステップ
黙字は「知識」として知るだけでは直りません。目で見たつづりより、耳で聞いた音を優先する回路を作る必要があります。そのために最も効くのが、音声のすぐあとを追って声に出すシャドーイングです。
- 文字を見ずに聞く(2回):まずスクリプトを隠して聞きます。つづりを先に見ると、ローマ字読みの音が頭の中で鳴ってしまうからです。
- スクリプトに印を付ける:読まれなかった文字に斜線を引きます。know の k、walk の l、listen の t のように自分の手で消すと、目が「読まない文字」を覚えます。
- 単語だけを3回まねる:印を付けた単語を1つずつ止めて、聞こえたとおりに言います。climb は唇を閉じて終わる、hour は母音から始める、という口の動きを確認します。
- 文でシャドーイング:スクリプトを見ながら3回、見ないで3回。単語単体で言えても、文になると古い読み方が戻ってきます。ここが勝負どころです。
- 録音して聞き比べる:自分の声を録り、b や l や t が紛れ込んでいないかを確認します。AI採点を使うと、余計な音が入った単語を自動で指摘してもらえます。
素材は、ゆっくりはっきり話す短い動画から始めましょう。A1レベルの動画でも、know、write、listen、daughter といった黙字入りの基本語は十分に出てきます。ほかの音の練習と組み合わせたい方は、発音練習エクササイズのメニューも役立ちます。
黙字の練習に向いている動画
黙字は身の回りの名詞に集中しているので、語彙がテーマの動画が向いています。
- 体の部位の英単語を学ぶ初級レッスン:knee、thumb、wrist、muscle など、体の語彙は黙字の宝庫です。
- 家族をテーマにした初級の語彙レッスン:daughter の gh、grandmother の d など、家族の呼び方で練習できます。
- キッチンの英単語をアメリカ英語で学ぶ動画:knife、cupboard のように、カタカナや思い込みとずれやすい語が出てきやすいテーマです。
慣れてきたら、日常生活がテーマの動画一覧から会話形式の素材を選び、文の流れの中で黙字を処理する練習に進みましょう。
1日10分・1週間の黙字ドリル
次の6文には、この記事で扱った黙字がまとめて入っています。1日1文、手本の音声を確認してから10回ずつ声に出してください。
- 1日目(k・w):I know the answer, but I could be wrong.
- 2日目(l):We walked and talked for half an hour.
- 3日目(b):I doubt he can climb with a broken thumb.
- 4日目(t・d):Listen, the castle is closed on Wednesday.
- 5日目(gh・g):My daughter designed the sign last night.
- 6日目(p・s・n):Keep the receipt from the island trip in autumn.
- 7日目:6文を通して録音し、1日目の自分の音と聞き比べます。
コツは、黙字のある単語を「短く言う」ことです。walked は1音節、climb も1音節。カタカナで数えた拍より短く言えたら、余計な音が消えた証拠です。
まとめ:つづりではなく、聞こえた音を信じる
英語の黙字は、kn、wr、mb、bt、-stle、gh、gn といった型でほとんど整理できます。日本人の場合、カタカナ語がすでに正しい音を教えてくれている語も多いので、新しく暗記するというより、ローマ字読みのくせを上書きする作業になります。目より耳を優先し、聞こえたとおりに口を動かす。その繰り返しがいちばんの近道です。
ShadowingEnglish では、レベル別・テーマ別の動画を1文ずつ止めながらシャドーイングでき、AIがあなたの発音を採点して、音ごとにどこがずれているかを分析します。読まないはずの b や l が残っていないか、今日の1文から確かめてみてください。


